スケバン刑事「愛と憎しみのアーチェリー」こそが“広島発ヒロインアクションムービー”のルーツ!
今日6月6日は、今を遡ること35年前の1985(昭和60)年に。ヒロインアクションの金字塔である『スケバン刑事』(初代)第7話「愛と憎しみのアーチェリー」が放映された日である。まだ海槌三姉妹が登場する中後半の連続活劇が始まる前の、一話完結時代(第1~10話)の作品であり、且つメインキャストにブレイク直前の財前直美が出演していたり、後に『はぐれ刑事純情派』の高木刑事役で有名になる大場順が登場していること以外、さして話題に上がる回ではないが、私にとって、そして“広島発ヒロインアクションムービー”にとって、非常に重要な回だった(御述する)。
この回で斉藤由貴演じる麻宮サキが潜入する私立クローバー学園は、教師による生徒の徹底的な管理教育が横行し、逆らう者は、全校生徒の面前で、椅子に拘束されたまま髪をザンギリに切り刻むという「公開処刑」を行ってまでして服従させるという、今の……否、当時の教育界でもありえないアナーキーな学園である。そんな学園の教職員にとって目障りなのが、学園の理不尽な方針についていけず、一人生徒の自主性を重んじる教育を推進しようとする門間先生(大場順)と彼が顧問を務めるアーチェリー部。ある時強引に廃部を強行する教師の一人の耳先すれすれに、アーチェリー部員の堀江由美(財前直美)が威嚇のつもりで矢を放つ。一時はすっかりビビってしまった教師も、すぐにこの行為を口実に由美を虎刈りの「公開処刑」にした上に、鋏の刃で目じりに深い傷を負わせた挙句退学させてしまう。そんな学園で、その後、件の廃部騒動で暗躍した教師たちが、次々どこからともなく跳んできたアーチェリーの矢によって瀕死の重傷を負わされる事件が起こり、その調査がサキの今回の任務だった。
表向きは転校の形で学園に潜入したサキがまず目撃したのは、アーチェリー部の生徒が、集団で「公開処刑」されている場面。その事態に異端は教師たちに向けてヨーヨーを構えるサキだったが、思いとどまって、その被害者たちに話を聞くところから内偵を始める。彼女らの口から由美の存在を聞いたサキは、今の彼女が出没すると思しきバーへ足を運ぶ。ロングヘアーを虎刈にされて、今はベリーショートヘアーに目じりの向こう傷を光らせ、ダーツに興じる由美は、そこで些細なことからサキとタイマン勝負を演じるが、すぐに“夕焼け番長”よろしく「お前もやるなぁ」と意気投合。サキは由美の口から、門間先生に対する思慕の情を聞かされ、ある仮説を立てる。
その直後、再びクローバー学園の教師が闇討ちされ、何故かその現場に由美がかつてアーチェリーの大会で表彰され、その後大事にしていたメダルが落ちていたことから、由美に嫌疑がかかり警察に追われる羽目に。そんな由美を逮捕寸前に一台のバイクが割って入り、彼女を救い出す。
バイクの主はサキ。自分が一連の事件の犯人だと一方的に主張する由美の姿に、サキは彼女が誰かをかばっていることを確信する。
夜間帰宅途中の学園の教師。それを目掛けて構えるアーチェリーの矢。その人物は何と門間先生。彼は自分の教育の理想を踏みにじった学園の他の教師たちに復讐するため、夜な夜な闇討ちをしていたのである。教師の頭上に仕掛けられたトラップに向けて放たれる門間の矢。それによって教師目掛けて無数の鉄パイプが降り注ぐ。そこへどこからともなく飛んできたヨーヨーの鎖が教師の手をからめとり、すんでのところで鉄パイプの“雪崩”から彼を救い出す。ヨーヨーの主は勿論サキ。彼女はピチピチのライダースーツの下にセーラー服を着用していた、という、物理の法則を無視したような出で立ちで、逃げる門間先生を呼び止めると、ヨーヨーで威嚇する。しかしそこに現れたのは由美。門間に心酔する由美は、彼を救うためわざとメダルを門間の犯行現場に落としてきたのである。必死に門間をかばう由美に、門間のねじれた教育観と闇討ちの非人道性を訴えると、ジャンプ一閃、由美のみぞおちにパンチを噛まして気絶させ、ついに門間を追い詰め、お約束の決め台詞を吐いた上で、門間をヨーヨーの鎖で拘束・逮捕する。
そこへ神恭一郎(中庸次)が登場。気絶している由美と拘束されてうつむく門間の双方を一瞥するなり「みんなどうして弱いんだ!」と神に詰め寄るサキ。そこで神は「時には弱さが罪なこともある。弱気を憎め! それが、お前がスケバン刑事であることの理由だ!」と、かなり強引にまとめるというか”幕引き”の言葉を放つ。黙ってその場を後にするサキ。
CS放送のおかげで『セーラー服反逆同盟』を最初から観始めている今、改めてこの「愛と憎しみのアーチェリー」を観ると、これって私立クローバー学園における「セーラー服反逆同盟」の誕生を麻宮サキが阻止する内容だったといっても過言ではないってことに気づいた。要は悪の巣窟・黒鳥学園の正浄化を目指し「反逆同盟」の結成を目論みながらも殺害された牧野先生を門間先生に、「反逆同盟」の4人を由美ほかアーチェリー部の面々って考えると妙に合致する。サキの方も、転校直後に目撃した「公開処刑」のシーンで思わずヨーヨーを教師目掛けて構えたように、本来この学園に潜入した目的は、反体制者の摘発ではなく、この腐りきったクローバー学園の教師たちに正義の鉄槌を下すことではなかったか! そう考えると本作はいささか不完全燃焼な物語だったといえるかもしれない。初見ではそんなこと思いもよらなかったけれど……
ところで個人的な話だが。この「愛と憎しみのアーチェリー」の観賞は、私にとっての『スケバン刑事』“初体験”だったのだ。当時は上記のような重く理不尽なテーマのことにまで思いを馳せることもなく、ただただサキ役の斉藤由貴と由美役の財前直美との、精一杯突っ張らかしたやり取りや、サキの独特の口上、サキがライダースーツの下にセーラー服を着ていたという設定の荒唐無稽さ、そして特撮ドラマを彷彿させるアクションシーンが実に面白おかしくてすっかり傾倒してしまったことが、今日まで広島発アクションムービーを撮り続ける、その原動力となったような気がする。本作観賞の翌々年、8ミリフィルムで未だ完成していない『スケバン刑事広島編 狙われた生徒会長』を撮り、それから20年後に、その“換骨奪胎”ともいうべき『天使諜報★神宮寺真琴~狙われた生徒会長~』を制作することになるんだけれど、今思うと『スケバン刑事広島編』の方はモロ「愛と憎しみのアーチェリー」の影響下にあったことも再確認した(;^_^A 勿論、換骨奪胎の方の『天使諜報★神宮寺真琴』の完成がなければ、現在まで「広島発ヒロインアクションムービー」シリーズを続けることも不可能だっただろうし、そう考えると当時面白おかしく観ることができたこの「愛と憎しみのアーチェリー」こそが、、私にとって“広島発ヒロインアクションムービー”のルーツともいえる。そう思うといろんな意味で今日は“広島発ヒロインアクションムービー”誕生(きっかけ)35周年といっていい日かもしれない(;^_^A