神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『追想』とタランティーノと火炎放射器と……

 フランス映画に『追想』という作品がある。1975年(カープ初優勝の年!)に公開されたというから、かれこれ45年も前の映画なんだけど、『イングロリアス・バスターズ』が公開された年に刊行された、洋泉社映画秘宝MOOKの“ナチ映画特集”の中で、監督のタランティーノが絶賛していた作品ということで、以前か興味を持っていた。タイトルからある種の緩いラブロマンスを想像しがちだが、実はなかなかエゲつない映画で、妻と子をナチに殺害されたフランス人医師が、あの手この手で復讐を遂げるというストーリーだ。そもそもその医師・ジュリアン役を若かりし頃(といっても中年だか(;^_^A)のフィリップ・ノワレ(『ニュー・シネマ・パラダイス』のアルフレード!!)が演じているのもトラウマものだ(;^_^A

 

 第二次大戦下、心配になって妻子を故郷の田舎に疎開させたのが仇となって、その村を襲撃したナチの軍勢によって、妻(ロミー・シュナイダー)を凌辱された挙句、火炎放射器で焼き殺され、その復讐に燃えるジュリアンが、ナチの軍勢が陣取るかつて自分の住処であった勝手知ったる古城に潜入し、陰から一人また一人とナチの兵士を血祭りにあげてゆく、というのが物語の骨子だ。監督はかの『冒険者たち』を撮ったロベール・アリンコだが、国内ではむしろこの『追想』の方が有名なのらしい。

 

 これも最近になって、ネット上でフルバージョン(といっても字幕・吹き替えなし)を見つけて、ようやく念願の観賞の機会に恵まれた。そこでまず最初に観たのが、タランティーノも絶賛のクライマックスシーンだった。ジュリアンの存在に気付かず、それをパルチザンの仕業と勘違いしてパニックに陥り、内ゲバを繰り広げた挙句、生き残ったナチの将校は、本当に集団でやってきたパルチザンの軍勢に、ついに拳銃自殺を決意し、ピストルをこめかみに当てて、うつろな表情で鏡を見つめる。するとその鏡が突如グニャ~っといびつに変形し、溶け始めたかと思うと、その先からいきなり火炎が噴射し、件のナチ将校をあっという間に火だるまにしてしまう。その炎の正体は、鏡の裏側からジュリアンが噴射した火炎放射器のそれだったのである。まさに火炎放射器の仇を火炎放射器で晴らす、因果応報のシーンだった。

 

 

 

 

 

 それで思い出したのが、昨年観賞した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のラストシーン、レオナルド・ディカプリオ演じるリック・ダルトンの自宅に乱入した“マンソン・ファミリー”のヒッピー女を、彼が火炎放射器で文字通り“焼き殺す”シーンだった。しかも彼がなぜ火炎放射器を持っていたかという伏線として、劇中登場する映画『マクラスキー 14の拳』で彼は火炎放射器でナチの将校たちを悉く焼き殺すシーンが登場するのだ。

 

 そう考えると、『ワンス・アポン~』のクライマックス演出に、『追想』が多大な影響を与えたのは想像に難くない(;^_^A