神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『0課の女・赤い手錠(ワッパ)』

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“ヒロインアクション”繋がりではないが、今日は私のお気に入りのヒロイン映画を紹介してみたい。尚、いささか過激な表現も随所のあるが、御容赦願いたい(笑)

 惜しくも数年前にこの世を去った野田幸男監督。彼の演出した東映作品にして、その激しさ・非情さから今日に至るまでカルト化しているのが、『0課の女・赤い手錠(ワッパ)』 である(いっておくが、Vシネマ『ゼロウーマン』シリーズとは、一応別物と考えてほしい)。

 サブタイトルにもあるように、主人公の零(杉本美樹)は真っ赤な手錠を操る(しかも、拳銃・警察手帳共に真っ赤!)凄腕の女刑事だが、悪を憎む気持ちから、ともすれば掟破りの捜査を行うため、過剰防衛でム所の世話になることもしばしば。今回も外交特権を悪用し日本国で黒人女をSMプレイで殺害した某国外交官を、得意技で殺害したことで、警察組織の怒りを買い、ろくに裁判も行われずブタ箱に監禁されていた。そんな彼女に突如一つの指令が下るところから物語が始まる。

 東京拘置所から出獄した男(郷瑛治)は、殊の外凶暴な男で、出所祝いのつもりか仲間と共に、早速アベックを襲う。そのアベックというのが“成田空港反対”のヘルメットをかぶった学生運動家と、大物政治家の娘という、これまた凄い“ロミオ&ジュリエット”で、その二人から何かストーリーが展開するのかと思いきや、いきなり男によって学生は殴り殺され(まさに問答無用のボロボロ!)、娘も強姦された上、彼らに拉致監禁されてしまう。しかも、娘の素性を知った彼らは、これ幸いと彼女を餌に3000万円の身代金を要求する。

 彼女の父親である次期総理大臣候補の政治家・南雲(丹波哲郎)は、 自分の略歴に傷がつくことを畏れ、極秘裡に警察権力を利用しての救出を命令する。そこで抜擢された零は、身代金受け渡しの場を利用して彼らのアジトに潜入し、巧みな色仕掛けで上手く彼らと行動を共にする。その間、娘が既に彼らによってシャブ漬けにされたことを知った南雲は、自分の名誉のため(本人は「天下国家のため」と嘯く!)娘の殺害を決意、零の上司(室田日出男)らを使って、零ともども娘の抹殺を指示するが……。

 ざっと、こんなストーリーが展開していくのだが、その中で描かれる場面場面が、殊の外エグい! 冒頭の学生運動家に始まり、数多くの人間がおびただしい血糊を吹き上げ、死んでいく。当時の東映作品における血糊は何故かやや紅がかった色をしていて、それが気色悪さを醸し出していたのであるが、この作品では更に、撃たれたり刺されたりした被害者が浴槽に倒れ込む描写が多用されており、当然湯船を真っ赤(真紅?)に染めるシーンとなり、気持ち悪さをより誘っている。

 また、警察のスパイと疑われて犯人たちからボロ切れのように殴られ強姦される杉本美樹(しかもその間ずっと無表情!)や、 逆上した郷にビール瓶でボロ切れのように殴り殺される弟(その直後、我に帰った兄の郷は、弟を抱きかかえて悲泣に暮れる?)、彼らを裏切って逃亡を図るも警察に捕まり、万力とガスバーナー、そしてホースの放水と、ボロ切れのようにねちっこく拷問される犯人の一味、ボロ切れのように犯されシャブ漬けにされる娘、それと、刑事でありながら権力側に屈し、零たちの殺害を画策するも、逆に返り討ちにあって、ボロ切れの火ダルマと化して死んでいく室田日出男(死の間際に零に向かって「救急車を呼んでくれェ!」と懇願する姿が最高に情なくて可笑しい!)と、大物政治家役の丹波哲郎を除いて、登場人物がみんな人権を無視した無茶苦茶な演技を強要され、ボロ切れのようになっていくという、もの凄い作品に仕上がっている。

 結局ラストは、娘を何とか救出し、警視庁の記者クラブへつれて行くことで、南雲の政治生命を奪った零が、タクシーに乗ってその場を後にするという、続編を期待させるようなシーンで幕を閉じる。東映異常性愛路線のエログロセンスを引きずりつつ、実は極めて社会派の物語を描いている作品で、素晴らしい傑作なのだが、これをじっくり観るには、かなりヘビーな精神状態が必要であることを覚悟してしてほしい。

 現在ビデオレンタルか、海外版DVDによって視聴可能な作品だ。