神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

君こそ真のヒロイン

 昨日はいささか下世話な話題で城野エミ=石田えりのことを書いたが、今日はちょっと真面目な話。
 
 これも高校時代、当時はまだ金曜に移行する前の「水曜ロードショー」で『翼は心につけて』という映画を観た。洋画系であるこの枠では珍しい日本映画。しかも解説の、まだ参議院に立候補して落選する前の、『シベ超』を撮る前の水野晴夫氏が「今日この映画を皆さんにお送りすることを私は誇りに思います」とまでいうくらいの映画だった。もっとも当時の私は、「お、石田えりが出てるじゃん」くらいの邪な思いで観ることになったのだが……
 
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 いやあ、感動した! 泣けた! 邪な動機で観た自分を恥じるくらいに……
 
 物語は、石田えり扮するテニス好きの中学生が、突如骨肉腫を発症して右腕切断の憂き目に遭い、その悲劇から懸命に這い上がり、ようやく新たな目標を見つけた矢先に、転移した癌によって命を絶たれる、といった内容の作品だった。これだけ書けば月並みの“難病モノ”と片付けられてしまいそうだが、主演を務めた件の石田えり嬢の好演が、この作品を単なる“お涙頂戴モノ”とは一線を画する、見事な感動作に仕上げている。
 
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 中でも一番私が感動したのは、いよいよ癌が転移して再入院を余儀なくされた主人公が、乗り込むタクシーの窓から、自分の住んでいたアパートの方を愛おしそうに見つめるシーンだ。そこには「もうここへは戻れないんだ」と察する彼女の覚悟のようなものが感じられて、泣かずにはいられなかった。老若男女を問わず、昨今は「自分の家の畳の上で死ぬ」ことが実に困難になってきた現状を思うにつけ、彼女の覚悟が決して他人事ではないと考えたりするシーンでもあった。
 
 それから2年後、学生となり寮生活を始めた頃、再び『翼は心につけて』が放映された。当時その寮の同級生に一人、同じように高校時代この作品に感動していた者がいて、二人で寮の他の者に本作を観るよう強く勧めたところ、最初は半信半疑だった彼らは、やがて作品を見終わるとひどく感動し、寮中しんみりしてしまったことを覚えている。
 
 どうもこの作品、諸事情に寄り未だDVD化が為されていないという。確か当時、ビデオデッキもなかったので音声のみカセットテープに録音したが、またその音源を探してみようか………